2026/02/16 10:28

【Up in Smoke(邦題:チーチ&チョン/スモーキング作戦)】
60年代半ばに花開いた、ドラッグによる意識拡張や理想主義。
サイケデリック・カルチャーが次第に陰りを見せはじめた70年代に、彼らは登場し、時代を風刺するコメディで支持を集めました。
当時の音楽シーンを見れば、ロックは巨大産業へと成長し、その反動としてパンクが台頭。
彼らが映画をヒットさせた1978年は、Sex Pistolsが解散し、パンクが新たな局面へと移行していく年でもあります。
アメリカではハードコアの胎動も始まっていました。
つまり、ヒッピーが過去のものになりつつあった時代。
60年代を実際に生きた元ヒッピー世代と、70年代以降の新しい価値観を持つ若者世代。
そのあいだに生まれた微妙なズレ——
それが、この種のコメディが支持された背景の一つだったのではないでしょうか。
60年代を謳歌した人々にとっては、もう戻らない「理想の時代」をどこか懐かしみながら、コメディとして笑い飛ばす。
同時に若い世代にとっては、滑稽な「過去の神話」として思い描く。
その二重構造が成立していたのかもしれません。
---「Stoneする」ということ
彼らの代表作『Up in Smoke』は、マリファナによる酩酊状態を指す《ストーン》という言葉に由来する「ストーナー映画」の先駆けとされています。
その後もストーナー映画として、
『The Big Lebowski』、
『Fear and Loathing in Las Vegas』、
『Inherent Vice』など、
ヒッピー・カルチャーの残像を引きずりながら、社会に完全には順応できない人物像が繰り返し描かれてきました。
70年代以降、「共同体意識」から放り出された世界で一人。
彼らは「理想の60年代」がすでに終わったことをどこかで理解しながら、
それぞれのやり方で社会と折り合いをつけようとしているように見えます。
一方で、もちろん私は、当時の時代背景を実体験として知っているわけではありません。
しかしこれらの作品に触れるたびに、説明できない郷愁のような感覚を覚えてしまうのはなぜでしょうか。
終わったあとの時代を知っている、ということ。
「元ヒッピーたち」と現代の私たちの間には、時代を越えて共鳴する何かが潜んでいるように思えます。
